Make組ブログ

Python、Webアプリや製品・サービス開発についてhirokikyが書きます。

1分で伝えるコツ

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大人になるほど、短い間に口頭で伝える重要さが増してきている気がします。 仕事の中でも大いにありますが、いろいろなイベントなどでも短い時間で人と話す、伝えるという機会はでてきます。

どうしてもうまく短く伝えられないなぁ、という悩みはあるかと思います。

短い時間、とくに 1分で伝えるコツ を僕なりにまとめておきます。

対象ではないこと

  • 嘘でもいいから話せというような「話術」
  • 社会人の必須スキル的な捉え方や「できないやつはダメ」的な姿勢

こういった姿勢の文にならないようにまとめています。

また、好き勝手話せればいいやという雑談の場合も想定していません。

対象にすること

短い間で伝える必要がある、考えを簡潔にまとめたい、というときに参考にしてください。

  • 1分で話すときのコツ
  • 思考をまとめるコツ
  • 話しながら考えるときのコツ

自分の考えを短く分かりやすく、最小限の労力で伝えられるようになりましょう。

1分間の流れ

1分は一瞬です。以下の順に話しましょう

  1. 要するに、何なのか(5秒)
  2. 意味を一文で(20秒)
  3. 共感できる例を1つ2つ(25秒)
  4. 要点の再掲(10秒)

5秒、20秒、25秒、10秒くらいの配分で、1分は終わります。

1. 要するに、何なのか

1分で何かを話すとき最も重要なのは 要するに、何なのか です。

その1分で伝えたい1つのこと です。何を言いたいのか、どんなものを紹介しているのか、何が面白いのか、伝えたい感情はなんなのか、ということです。必ず1つにします。

例えば

  1. PyQ の魅力は、ブラウザだけで徹底的にPythonを学べることです

のような一言です。

他には「裁定取引とは価格差を使った稼ぎ方です」などです。

ポイントは2点です。

  • 「〜は」、「〜とは」、「〜とは要するに」と先に言ってしまう
  • ある一面を伝えられれば十分と割り切る

「〜とは」と始めることで話のまとまりがつきやすくなります。 話しながら考えるときは、いかに自分の思考を切り落とすかが大事 と僕は思っています。「〜とは」と話始めると、一息の間に話せる内容だけが頭にまとまってきます。

また、 一面を伝えられればそれで良いと割りきりましょう 。ものの性質や魅力は一言では語れません。長々と話して分からないよりも「これだけは持って帰ってほしい」と思うものを1つだけ伝えたほうが良いです。1分では伝えられませんし、1時間かけたところで相手は1つしか覚えてないからです。

「〜とは」で始めて、一文で「〜です」と終わりましょう。思いが大きければ大きいほど「〜で、〜で、〜で」と続けたくなりますが、最良の1つだけを選びましょう。

2. 意味を一文で

「要するに」の後は肉付けする一文を話しましょう。

一文目は結論です。結論だけ言われても納得できませんし、意味や背景が分かりません。その「意味」を次の一文で話します。 例えば前の例に一文足すと、このように説明できます。

  1. PyQ の魅力は、ブラウザだけで徹底的にPythonを学べることです。
  2. もともとプログラミングの障壁になるのは2点で、学習する環境を用意することが大変なことと、入門の内容はできても実務で活かせない・プログラミングを身につけられないことにあるんですね

こうすれば「要するに」の部分であった「PyQの魅力」に意味が肉付けされます。聞いた人は「あぁ、だから必要なんだ」、「うんうん、あるよね」、「そういうことなんだ」という気持ちになるような意味を説明しましょう。 「要するに」が1つにまとまっていれば、話し過ぎない程度に意味を伝えれば良いので一番簡単な部分です。

3. 共感できる例

共感できる例を紹介して具体的なイメージを共有しましょう。

1分間では伝えたいことの0.01%ほどしか伝えられません。より具体的な イメージを共有するための共感できる例は大事 です。 相手への疑問も残しやすい点ですし、話が続けられるなら深堀しやすい点になります。

先の例をさらに膨らませると以下になります。

  1. PyQ の魅力は、ブラウザだけで徹底的にPythonを学べることです。
  2. もともとプログラミングの障壁になるのは2点で、学習する環境を用意することが大変なことと、入門の内容はできても実務で活かせない・プログラミングを身につけられないことにあるんですね。
  3. 例えばPyQはサイトに行って登録しさえすればすぐにプログラミングの学習を開始できるんです。エディターとかプログラミング環境、ターミナルとかはすべてブラウザー越しに使えるんです。あと、PyQのコンテンツはプログラミング言語の入門だけでなくてWebアプリケーションの作り方とか集計スクリプトの作り方、ユニットテストとか設計のお作法まで動かしながら学べるんです。

肉付けされた「意味」が、具体的にどう実現されているのかを紹介できます。

とくに、 相手と自分の間でどれだけのコンテキストが共有されているかが重要になります 。なるべく引っかかる単語を散りばめてイメージを膨らませたいところですが、相手と自分の間で「通じる単語」がズレていては意味がないからです。

これが 共感できる例 です。今回の例ではある程度プログラミングを知っている人に伝えている場合を考えています。「ターミナルがブラウザで動くんだ」といえば、それがどれだけ意味のあることなのかも伝わる相手に、「ターミナル」という具体例をだします。

さらに具体例が良いと疑問を持ってもらいやすくなります。例えば「ターミナル?OSは何なんだろう」や「ターミナルを自由に使えて運営は大丈夫なのか?どこまで制限があるんだろう」などの疑問がでてきます。 1分で伝えられることは1つです。なるべく共感できる具体例をあげておいて、時間があるときや質問時間に話が繋がりやすくしておくのが良いです。

具体例はお互いのイメージを共有して、想像を働かせられるのが大事です。 お互いのコンテキストを理解して紹介することが大事になります。

4. 要するに何かの再掲

要するに何かの再掲とは、「意味」と「要するに何か」をもう一度話すことです。

具体例を通して話す人も聞く相手も言いたいことを納得できましたが、ここでもう一度話の頭に戻って話をまとめます。 これがないと結論がボヤケる雑談になってしまうので、戻ることは大事です。時間や体力に余裕があれば「意味」を振り返ってもいいですが、「要するに何か」をもう一度言うだけでも相手の記憶に残る話にできます。

  1. PyQ の魅力は、ブラウザだけで徹底的にPythonを学べることです。
  2. もともとプログラミングの障壁になるのは2点で、学習する環境を用意することが大変なことと、入門の内容はできても実務で活かせない・プログラミングを身につけられないことにあるんですね。
  3. 例えばPyQはWebサービスに登録しさえすればすぐにプログラミングの学習を開始できるんです。エディターとかプログラミング環境、ターミナルとかがすべてブラウザー越しに使えるんです。あと、PyQのコンテンツはプログラミング言語の入門だけでなくてWebアプリケーションの作り方とか集計スクリプトの作り方、ユニットテストとか設計のお作法まで動かしながら学べるんです。
  4. なので、プログラミング学習の障壁になる、環境の用意、実務で活かせないってことをPyQは解決できるんです。だからPyQで学ぶ意味があるんです。他にないPyQの魅力は、ブラウザだけで徹底的にPythonを学べることなんです。

話のスジが通っていること、繋がりがあることを意識して結論にもっていきましょう。

とくに最後の一言が曖昧になると、話として言いたいことを覚えてもらえません。 要するに何か〜から意味、具体例をうまく話せていれば、繋がりは保証されているので大丈夫です。

さてこれでPyQを紹介する1分になります。 ぜひ1分で読んでみてください (脳内で読んでも良いので、時間を測ってみることが大事です)。

話しやすくなるコツとしては3つ

  • 抑揚をつけること
  • 助詞は言い間違えても飛ばしても気にしないこと
  • 口語的に伝えること

こうしたほうが話しやすくなります。

まとめ

  • 一言目には「要するに、何か」を伝える
  • 二言目には「要するに」の意味を肉付けする
  • 三言目には共感できる具体例をあげる
  • 最後に「要するに」を再掲して締める

このメソッドを意識しておけば、1分という短い時間でも人に伝えたいことを伝えられると思います。 どうしても短く話せない。どれだけ話しても相手に伝わってる気がしないというときに、思考をまとめるコツ、話しながら考えるときの補助ツールとして参考にしてもらえると嬉しいです。

短く簡潔に、最小限の労力で伝えたいことを伝えられるようになりましょう

最後に、素晴らしい本から1つ引用しておきます。

文章力のある人を雇う。

マーケターでもセールスマンでも、デザイナーでもプログラマーでも、文章力は大きな要素となる。 文章がはっきりしているということは、考え方がはっきりしているということである。 文章家は、コミュニケーションのコツもわかっている

小さなチーム、大きな仕事――働き方の新スタンダード (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

小さなチーム、大きな仕事――働き方の新スタンダード (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

それでもうまくいかないときは

推定ですが、方法や思考法でなく心理的な部分が大きいと思います。

以下のように割り切って考えるのをオススメします

  • 1分ですべては伝えられないと諦める
  • 正確さより相手に伝わることが大事だと考える

まず自分の爆発する思いは0.01%しか伝えられないと諦めましょう。

どれだけ素敵な気持ちや思いがあっても、ある時間内に伝えられることは限界があります。 いっぱい喋ると話の軸がブレてしまいますし、たぶん相手は1つ2つのことしか覚えられないです。

細かいニュアンスや、表現しきれない思いはいっそのこと捨てましょう。 難しい単語も諦めましょう。たまに「べき等性」のような言葉をどうしても思い出したくなってしまいますが、すぐ諦めて「何回実行しても同じ結果になる」とか平易な言葉で言いましょう。

安心してほしいのが、短い間で要点を伝えられた場合、相手も質問を重ねてくれる可能性が高くなるということです(元の話を理解できないと質問もできないからですね)。その質問を貰えれば、さらに「はい。~とは~です」から続ければ良いわけです(時間が許すのであれば)。

とにかく頭がフリーズしないように、なるべく簡単に考えましょう。口を動かしながら考えて、相手に一つ一つ要点を伝えましょう。

(もちろん雑談のように好きに思いを話せれば良いという場合は、こんなこと気にせず好きに話したほうが楽しいですね)

このメソッドの使い道

1分間で何かを話したいときに、筋道として意識する程度にすると良いと思います。

厳密に一文であるかどうかなどは気にする必要はないです、時間配分や、話の持って行き方として気にしておくと良いかなーくらいです。

これはもともと論文や評論で使える書き方です。僕が書いたのは、それを「1分間で伝える」ためにまとめ直した内容とも言えます。 なので、ブログを書くときや何かスライドを作るときにも使える方法だと思います。実際この記事自体がだいたいそういう書き方になっていると思います。

この話をしたかった理由

社内の読書会をしているときに重要さに気づいたからです。

先日のブログで「BeProudの社内読書会でReadForActionという方法で読書会をしている」と書きました。 このReadForActionでは、担当した質問や要点に2分という限られた時間で話す必要があります。

blog.hirokiky.org

回を重ねるごとに、自分も参加メンバーもエレベーターピッチのコツを掴んできていたように思います。 とくに、 時間の決められた短い間で話すことで自分の思考や知見が凝縮される イメージがあります。 この短い時間で話すコツは、思考をまとめるコツとしても重要なのではないか?個人に左右されずにポイントをおさえて練習できるのでは?とおもったことにあります。

また、匠メソッドでのまとめをエレベーターピッチで話せるようにしておくというのも面白いです。 短い間で話すことは、自分の思考力やまとめ力も上がるんじゃないでしょうか。

shacho.beproud.jp

ちなみにトップの画像ははるおさんが撮ってくれたやつです https://twitter.com/haru860/status/778444491648700417

1分で伝えるコツ、もう一度まとめ

  • 一言目には「要するに、何か」を伝える
  • 二言目には「要するに」の意味を肉付けする
  • 三言目には共感できる具体例をあげる
  • 最後に「要するに」を再掲して締める