Make組ブログ

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仕事の精度、家政の精度。なぜ核家族の育児は大変なのか

家事、育児の話題続きで申し訳ないです。 今僕が育児休暇中なので考える機会が多いのです。

ですがこういう課題の多い分野ほどビジネスチャンスが大きいと思うので、記録として残しておきます。

仕事の"精度"と家政の"精度"は大きく違う

仕事と家政の違いは何でしょうか?働きに外に出る人と専業主夫/婦の揉める種として以下のような話を聞きます。

  • 私の外仕事のほうが大変だ
  • 私は毎日24時間仕事してるようなものだ

僕は仕事と家政の違いは以下のように分けて考えるべきだと思います

  • 一般的な仕事: 80%〜120%の精度の仕事を、週に5回、8時間働く
  • (自宅における)家政、育児: 40%〜60%の精度の仕事を、週に7回、12時間働く

一般的に仕事というのはまず100%が当たり前という世界です。 手順があるのであれば、その手順を間違えないことが大切になってきます。そのうえでプラスアルファを出せればより良いと捉えられます (もちろんクリエイティブな仕事はこの限りではありませんが、基本にある考え方は理解してもらえると思います)。

一方、自宅における家政というのはかなり精度が低くて良いです。 四角い角と丸く掃いたところで、売上が落ちるようなことはありません。 一日トイレ掃除をサボっても、まぁ生きてはいけるでしょう。お客様商売のようなシビアさはありません (気を遣う必要がある親族と同居している、配偶者が細かい点に厳しい場合などは精度が求められますが、これも基本的な部分は理解してもらえると思います)。

育児の大変さは、精度を高めようとすることだ

育児が大変なのは、その家政において精度が求められる(求めてしまう)ことにあります。 内的な要因としても「命を預かる以上」という責任感が産まれますし、「よく育てたい」という気持ちや、親戚の期待、子供への社会の厳しさ(泣き声に苦情がくる)もあって仕事に高精度を求められがちです。 ですが前述したようにこの仕事は言ってしまえば7D24Hに近い仕事です。そこで100%以上の精度を常に出していると燃え尽きてしまいます。

たしかに「子供が泣かないようにしないと」「ちゃんと消毒しないと」「ミルクをあげてちゃんと体重を増やさないと」など気にすべきことは多いです。ですがこれらすべてに100%の精度を求めると仕事が多すぎます。 「まぁ泣いてもいいや」「サカザキ菌なんてそうそういないやろ」「それなりに体重増えてるし大丈夫やろ」くらいの雑な気持ちでいかないといけません。

なので 育児は仕事ができる人ほど辛い ものだと思います。 予測不能で、論理的に解釈不可能で、膨大な仕事があるからです。でも、雑で良いんです。

育児は核家族には不可能。でもなぜ外注しにくいのか

育児をしてみて感じたのは、人類の子供というものが核家族で育てるようにできていないことです。 子供の世話をしながら家事も仕事もするというのは不可能です。現代においては社会保障制度がある程度充実しているので誤魔化しながら運用されていますが、そもそも不可能と言うべきです。

とはいえ親族に頼れというのも前時代的です。 では「代行」を使うのはなぜ難しいのでしょう。

それは「家事・育児代行」とすると「一般的な仕事」になり、80%〜120%の精度が求められるようになるから です。 とくに育児であれば命を預かる仕事なので、精度は100%以上を求められるでしょう。それを発注するとなると自分でやるより割高になるのは無理ありません。

100%の仕事として24時間の仕事を依頼するとなると、もちろん数万円単位の支払いとなります。 家政として自分でやったり親戚に任せるのであれば、50%くらいの精度ですが、それほど高額な仕事にはなりません(一日子供を親に預けていて、5万円、10万円を支払うことはないでしょう)。

だからといって「50%の精度の育児」を買う人はいないでしょう。命を預ける仕事だからです。 この 仕事に期待する精度の意識差 が、核家族を追い込むことになっています。

解決策は?

僕が考えるなかでは、信頼をベースにした仕事の依頼しかないと感じています。 お金が動くと100%精度の仕事を求められるので、贈与経済のような信頼を元にしたやり取りがうまくいくかもしれません。 信頼し合える人たち同士が、お互いに50%の仕事を担保し合えるような関係です。 今の社会では親族くらいしかありませんが、そういったコミュニティーを形成するサービスというのは考えられます(田舎の閉鎖的になったコミュニティーにも問題はあるので)。

ともあれ、局所最適化した都市型経済というのは、東京で毎日通勤電車に乗る単身者に向いたものなのだなと感じています。

皆さんのアイディアで、ぜひ日本の核家族(そして僕)を救ってください。